はじめに ~詩と二次元世界への恋
アニメーションと詩は相性が良いと思っている。
両者とも、こちらからお邪魔しますと扉を叩かなければ、何も語り掛けることはない内気な文学だ。
例えば日曜朝、プリキュアを見て、いわゆる普通の人が絶対に流すことはない類の涙をこぼす。
その瞬間、私は世の人からヲタクと呼ばれる生き方をしていることに、感謝と誇りを持つのだ。
良い年してアニメばかり・・・それは逃避だと、言う人もいる。
そうかもしれない。実際わたし自身も多少の恥ずかしさと巨大な後ろめたさを常に感じている。
だがこれだけは言おう。
二次元に対峙して生きることは、けして楽ではない。
それは一方通行の恋を受け入れるという生き方だ。
なぜなら彼ら彼女らは、私たちに笑いかけることも、拒絶することもけしてない。
彼の世界の破滅も救済も、しょせんは私たちに何らの影響を及ぼすこともない。
それどころか別時空の彼ら彼女らが活躍するたびに、
自らがいかに矮小な存在であることを、
またこの先も何者にもなれないであろうことを、
思い知って、
憧れて、
そしてまた人生を呪う。
そんなネガティブな人生賛歌に社会的な価値はないことはわかっているが、
しかしそこから生まれるもの、それは詩とよく似た内向きの力を持っていると思う。
誰の為でもない、何を為すこともない。
しかしいつか何処かへたどり着くかもしれない、
もしかして、受け取る人だっているかもしれないと少しは期待して風に飛ばす、
そんな未来への手紙だ。