アイドルタイムプリパラとアイカツスターズ、ふたつのリスタート
2017年、春。いつもの番組改編期である。
しかし我々女児アニメを愛する民にとって、今春は次世代まで語り継がれるべき激変の春と言えるかもしれない。
なんといってもプリパラとアイカツスターズ、両作品の前身であるプリティーリズム、アイカツの時代からここ数年間女児アニメ界をけん引してきた二つの作品が、それぞれの語るべき物語を高らかに謳いあげ、そしてその大団円の興奮も冷めやらぬうちに同時に再び大海原に出港したのだ。
そしてそれはまたしても真逆のアプロ―チだ。
この二者の関係はほんとに面白い。
目的は同じ「自身の筐体ゲームを流行らせること」なのに、やっていること、やりたいこと、そしてやるべきことがことごとく真逆で、
しかもそれぞれ正しい。
各話の直後に呟いたツイートから、具体的に語っていこう。
遅ればせながらアイドルタイムプリパラ見たぷり。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月4日
女児アニメとしてより洗練された印象。
新しい町、新しい友達、そして新しいプリパラ。
どこにでもあるような小さな出会いから、何かがはじまる予感。
そんなワクワクが詰まったピカピカ小学六年生な1話だった。
#pripara
まずはプリパラ。
世界観を引き継ぎつつ新たな街に舞台を移してのリスタート1話目。
新主人公である夢川ゆいを神アイドルとなった真中らぁらが導いていく・・・話なのだがそこはプリパラ、そう単純ではない。
なんと新プリパラは未だ工事中(?)の閑散とした空間であり、完全なるゼロからのスタートを強いられる。
そもそも新たな舞台パパラ宿では男子プリパラその名もダンプリがトレンディであり女子がアイドルをやるという文化そのものがない上に、校長はどこかの誰かさんを彷彿とさせる超管理主義者にして前時代的な「清く正しい女子」の保守者(のちにダンプリオタクだと判明)。
さらに当のらぁらはプリチケのバグによりプリパラチェンジ後の姿になれなくなってしまい、そのためパパラ宿での唯一のプリパラ同志であるはずの夢川ゆいには誇大妄想癖(おまいう)だと舐められる始末。
このように神アイドルにまで上り詰めた真中らぁらを、ちょっとずつ身動きとれない状態にして強制的に「主人公としてのふりだし」にもどしてからアイドルタイムプリパラの物語ははじまる。
これによって神アイドルグランプリを経たあとのれっきとしたプリパラ4期でありながら、「アイドルタイムプリパラ」は新番組として始まることができたわけです。
これが実にうまい。
「アイドルタイムを貯めないとライブが出来ない」って設定、 ステージ前の茶番に説得力を持たせるという意味で実に上手いよなと思う。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月11日
加えてババリアがグロちゃん恐怖政治時代を彷彿とさせる横暴ぶりを見せ更に全寮制という事もあり、絶妙にプリパラの障害が配置されている。
#pripara
神アイドルにまでなってしまったらぁらを如何に違和感なく弱体化させて、ゆいちゃんとのコンビを成立させるか、いわゆるサトシリセットのプリパラ流回答がこれというわけですね。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月11日
つくづく狂ってるように見せて用意周到なアニメです。#pripara
もしもらぁらが神アイドルとしてパパラ宿に迎えられたなら、ゆいとのコンビは少なからず師弟関係となっていただろう。
それではいけない。プリパラで描かれる関係性は対等なトモダチでなければなりません。
そこで最初はゆいにらぁらを舐めてかかってもらい、共に穴を掘る(意味深)ことで友達としての関係を構築してもらう。
そしてそのあとすぐに神アイドルだったことは知れるわけだが、その頃にはゆいのキャラクターも十分浸透していて、今更らぁらへの態度を変える子ではないことは我々視聴者は分かっているという寸法だ。
結局プリパラチェンジがバグった件には大した意味はないらしく、それは少し残念な部分もあるのだけれど、既にゆいとの関係性が出来上がったので設定自体の役割は果たされていると言える。つまりゆいにとってらぁらは神アイドルの先輩ではなく、かしこま頑張る友達なのだということ。 #pripara
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月11日
こうしてたった2話でW主人公体制が構築されて、いつの間にか新しいパパラ宿でのらぁらの活躍に説得力がついている。なんということでしょう。匠と言わざるを得ません。
さて、アイカツスターズはどうかというと、こちらもまた凄い。
こちらは四つ星学園のトップ、S4に就任した虹野ゆめが、海の向こうからやってきたアイドル海賊エルザに打ちのめされ、そして武者震いをするというところから物語を再開する。
それはまさに黒船来航であり、今までの常識を覆す事件だった。
ああ、ワクワクしちゃってる。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
武者震いを隠せないゆめの顔は、不安と期待に満ちて、頼もしい!
これは面白いシリーズになるぞ。
#aikatsu
敵(正確には違うが)のヘッドハンティングが永遠のライバルであるローラじゃなくてゆめに来る…というのは変化球に見えてアイスタ的には「らしい」かもしれない。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
どこまでも虹野ゆめの物語なんだな。
世界編…面白いじゃない!#aikatsu
[https://twitter.com/halukuku69/status/849926584601464832:embed#「ゆめの夢はS4になること」ではその夢が叶ったら?ある程度この問題を出して来ると思っていたが、
まさかここまで徹底的に井の中の蛙に過ぎないと叩きつけるとは思わなかった。しかし不安はない。なぜなら彼女らは大海を前に怯む蛙たちではないからだ。 #aikatsu]
アイスタがとったのは「更なる強敵」路線だ。
そこでは今までの四つ星学園でのアイカツは通用せず、「お前らのは甘ちゃんサッカーなんだよ」(by日向小次郎)理論で一度は叩きのめされる。
しかし続く52話で見事な逆襲に転じることで、ゆめの力は今までのアイカツに根差していると示される。それはアイカツスターズの1年目がけして無駄ではなかったことを教えてくれるが、しかし同時に、ゆめの立つ寄りべとなる四つ星学園は、彼女の枷となるかもしれないとも暗示されている。
遅ればせながら今週のアイスタ見たんだゾ。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月14日
スタープレミアムレアコーデがなんぼのもんじゃい四つ星なめんなよゴラァ!な見事な反撃だった。
ゆめにとっての地雷がエルザに理解し得ないローラの存在なのも上手い。
ローラの今後に陰りをもたらす効果もあり、良い緊張感。#aikatsu
四つ星学園はある意味で鎖国状態みたいなもので、それは平和で豊かではあったがやはり閉鎖的で予定調和的であった。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月14日
そこにヴィーナスアークという黒船が来航した事でまるで別のアニメのように激動の物語になってきた。そしてその上でゆめがどうするか…見所がくっきりしている。 #aikatsu
S4の称号、四つ星学園という舞台が虹野ゆめを今この場所に立たせている。しかしそれを縛られていると一瞬でも感じてしまったら、乗船を拒む事はもうできないだろう。わけても小春ちゃんが乗っていると知ったら、思い留まれるだろうか。なかなか酷な展開になる予感。 #aikatsu
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月14日
アイカツスターズは今までの物語に上層を加える事で、ゆめの新たなはじまりとしたのだ。
それはもう四つ星学園だけのアイカツには戻れない事を示してもいる。
ゆめはもう、未来に向かっていくしかない。
対してプリパラはどうか。実はこれについても対称的で、
プリパラはなんと、時を戻した。と、いうか神シリーズから止まっているのだがw
今回は明らかに自覚的に、「止まった時」を印象付けている。
夢川ゆいは夢見る天才。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月18日
けれどその夢は今のところ寝て見る夢と区別がついてないようにも思える。
炊き上がりを告げるタッキーと、魔法の終わりを知らせる鳩時計。
それは夢の終わりか、それとも始まりか。#pripara
EDから、「時計の針まわそう」と歌いながら逆時計回りに腕を回す振り付けを「小学生に戻す」という解釈があって、なるほどと。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月22日
となるとやはり4期はサザエさん時空への答え・・・時が進まないというより誰かが時を戻している・・・?まさかみれぃお前・・(冤罪ぷり)#pripara
そしてまるで示し合せたかのように、アイカツスターズは「時は戻せない」ことを強調する。
リリィサキパイ・・・いや綺麗なあじみ・・・じゃないリリィ先輩が星のツバサを手にした経緯に思いを馳せよう。
3年生はどう頑張ってももうS4にはなれない。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月20日
そんな当たり前の事実が、想いの深さの分だけ檻になる。
目の前をかすめ通り過ぎた夢なら自ら飛び越えて、その先の未来をつかめ。
恋い焦がれた喜びも悲しみも、全ては未来の糧なのだから。
リリエンヌ凛々しいぞ。#aikatsustars
繰り返す時の中で、新しいプリパラを作るという未来へ向かうアイドルタイムプリパラ。
不可逆な時間を生きながら、更なる高みの未来をみつめるアイカツスターズ。
あまりにも対称的なリスタートである。
私はこれを両作品の根本に根差した違いだと思っている。
プリパラはどこまで行ってもアイドルそのものではなく「プリパラという空間と私」がテーマである。
対してアイカツはアイドルになっていくことそれ自体がドラマになる。
この違いである。
プリパラにとってアイドルは手段に過ぎないが、アイカツにとってそれは目的なのだ。
別に対立するものではないがアイスタ2期の気合の入り方を見るにアイカツプリズム戦争はまた新しい段階に入ったなと感じた。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
1年前はまだあくまでアイカツの賞味期限が切れたというスタンスでプリパラを意識してなかったように思う。
今回は違う。完全にミサイルの照準を合わせてきている。
それはぴのん星の姫っぽい新キャラがどうとかいうぱっと見の話ではなく、もっと両作品の根本に関わる部分で。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
根本、それはアイドルを通して何を描くかというそもそもの動機、テーマ。
もっと言えば我々がどちらかに強く傾倒するとすればそれは何故か、何を求めているのか、という問題だ。
具体的にはまずプリパラの事例を上げると、この作品はアイドルアニメでありながらなんとアイドルに主眼をおいていない。主題はあくまで「自己と他者」だ。140話かけてそれを貫き通すことで勝ち負けを超えたところにクライマックスを置くことを可能にしたのは現代女児()の記憶に新しい所である。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
それは実にコペルニクス的転回だったのだが、しかし他方アイカツ陣営から見ればそれははっきり言って逃げである。ずるい、と言い換える事もできる。もしS4決定戦が観客全員で歌うような展開だったら大ブーイングだったろう。最終的に勝ち負けはつける、つけなきゃならない、それがアイカツの流儀だ。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
つまりプリパラは自らのフィールドに客を取り込む事で勝利をつかんだのだ。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
それは自分たちだけが使うことのできる必殺技だった。
アイスタには絶対にできない、いや例えやりたくても出来ない、アイドルアニメとしては反則に等しい結論。しかしプリパラは巧みにそれを合法にして見せたのだ。
そして現在、アイスタ二期のリスタート。アイスタが自分たちのフィールドで失地回復を図る、その作戦開始の号令のように聞こえた。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
アイカツが掲げるべきテーマ、それは彼岸の民である私にもわかる。アイドルアニメとしての王道だ。誰が一番美しく、そして凛々しくあるか。それを追い求めることだ。
加えてアイスタ側がプリパラに比して長じているもの、それはなんといっても潤沢な資金とノウハウの蓄積だろう。今回、1話の中でその辺りをまざまざと見せつけてきた。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
まさに逆襲の時・・・プリパラ民としてはやっとこちら側を見てくれたという嬉しさと、眠れる獅子が目を覚ましたという恐怖がある。
私は常々、プリパラはカウンターだと思っている。倒すべき王者がいないのは似合わない。
— 鈴木涼 (クロネコナイフ) (@halukuku69) 2017年4月6日
その意味でもアイスタが本気を出してきたのは喜ばしい。女児アニメを専攻している現代の1アニメファンとして。
戦争ではなく切磋琢磨として、この界隈はますます面白くなると、確信する次第であります。
確かなことは、両者とも自らの描くべきテーマをはっきりと自覚している、哲学のあるアニメだという事だ。
そしておそらく2017年度は、この二つの星がはじめて同じエネルギー同士でぶつかる真っ向勝負になるだろう。
まったく異なるテーマを持つアイドルアニメが、それぞれが描くべき頂点の先を描いていく。
ゾクゾクするじゃないか。
1年後、両作品のがどこにたどり着いているのか、月日の流れの速さに恐怖しつつも今から楽しみである。