夢と詩情のアニマ

~プリズムの煌めきが生まれる場所、あるいはその墓場

夢のつづきは夢じゃない

「さよならだけど、さよならじゃない」

 

…ごめんね、本当はあまり信じてなかったんだ。

だってよくある綺麗ごと。

「貴殿のさらなる活躍をお祈り申し上げます」

そんなお祈りメールとおんなじ。

大人が子供をなだめる気休めの言葉だと、

大人が大人に言い訳する時の社交辞令なんだと。

 

忘れていた。プリティーシリーズ、この街の人たちは本当に諦めがわるい。

彼らが「還ってくる」と言ったからには我々も待ち続ける。

その熱情が、何度もあり得ない奇跡を起こしてきた事を。

信じるに値する約束だという事を。

 

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2020年12月6日、マクパリの歓喜

恒例となった、しかし今年は社会的情勢により一時は開催そのものが危ぶまれたプリパラ&プリチャンウインターライブ2020にて、それは発表された。

 

「アイドルランドプリパラ」

pripara.jp

 

かねてより準備中と予定されていた例のアプリ。

これまで出そうで出なかった「プリパラ版SNS」と言った感じのアプリだ。

いや、プリパラが本来SNS的な側面を持っていることを見ると、これはついに現実世界にプリパラが実現されたと言ってよく、まさに待望のアプリ化である。

(にも関わらずこのタイプのアプリが今まで展開されてこなかったのは、おそらく筐体との関連性、そしてターゲットの問題が大きいのだと思われる)

 

アイドルタイムプリパラ最終回のラストシーンをそのままPVとして使う憎い演出。

真っ白な未来が待つ扉の先へと駆けて行った、その先がアイドルランドプリパラであると。

BGMがちゃんとBelieve my Dream!なのも良い。

この曲以外はあり得ない。

「世界旅行に旅立とう」

この歌詞の通り、新たなる世界へとみんな旅立つのだ。

それは思い出ではなく、今から始まる物語なのだから。

 

…アプリ告知のPV、この時点で私は勝手に上記のようなクソデカ感情文脈をとらえてもう泣いていた。

しかし続けてテロップが入る。以下、当時の私の心の声と同時再生でお届けする。

 

「さよならだけど、さよならじゃなかったね!」

…うん、そうだね。良かった。アプリで戻ってくるんだ。

 

【原作 タカラトミーアーツ/シンソフィア

…うん、アプリもそういう表記しますもんね。

 

【シリーズ構成 土屋理敬

…まあアプリ内にもシナリオいっぱいありますもんね。(このあたりから様子がおかしくなってくる)

 

【監督  森脇真琴

………?

…OPムービーでも作ってくださるってことだな。

 

そしてモニターに大写しにされる「アプリ連動 新作アニメ」の文字!

ゆ゛め゛め゛!!!(声なき声)

 

私は今回諸事情にて現地には行けず配信での参加だったのだが、これはその場にいたら危なかった。自重を求められている【大声での発声】をしてしまったかもしれない。

いや、やはりそうはならなかったか。むしろ、何が起こったのかわからずフリーズしていたのだから。マクパリに居た人達もそうだったかもしれない。むしろ押し殺すような悲鳴と嗚咽が、我々の宿願と歓喜を何よりも顕していた。

ありえないありえないありえない事がだけど今、現実に起こった。

さよならだけど、本当にさよならじゃなかった。

あの約束は嘘ではなかったのだ。

 

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さて、そんな歓喜の夜から数日、まるで魔法のようにプリパラは私の生活を彩ってくれる。

「世界が煌めいてみえる…」

かつてプリティーリズムに魅せられた諸先輩たちはキンプリ公開時にもそのように言っていたものだが、その気持ちがわかった。

本当にパワフル無敵である。

「プリパラが離れていく世界」から「プリパラがやってくる世界」へとコペルニクス的転回をしたのだから。実際には世界はなにも変わっていない。私の心がそう変わったのだ。

 

例えばBelieve my Dream!、あるいはGet Over Dresscode、そしてMemorial…などなど、アイドルタイム終盤の曲たちを聞いてみると、そこにある意味がまるで違って聞こえる事に気付く。

すでにメモリアルは二度と戻らぬ刻を記した記念碑ではないし、GODは届かない見果てぬ夢を想う勇者ではなく、ビリマイはプリパラの無い世界へと旅立つ勇気と決別の歌ではない。

すべて、これからの事を歌っているように聞こえるのだ。

 

例えばピュアハートカレンダー、それともスパイシーホットケーキ…名盤【プロミスリズムパラダイス】に収録された楽曲を聴く。

そこにあったのは今までは「あり得たかもしれない夢のつづき」だったが、ここに至ってその特別性はなくなってしまった。

なぜなら「夢のつづきなら見ればいい」からだ。

ピュアハートカレンダーにつけた丸を、ひとつずつ叶えていける。叶っていく夢を見れる。そんな世界線に我々はついにたどり着いたのだ。

もはや夢のつづきは夢じゃない。

 

この歓喜の気持ちだけで、強く生きていける。

我ながらいささか重いが、そんな想いだ。

これがきっと、プリズムの煌めきというもの。

喪って、また見つけて、その在りかにようやく気付いた。

 

ああ春になれば、プリパラが還ってくる。

森脇監督が描く新作アニメとしてのプリパラが還ってくる。

その日を心待ちに待てる、そんな至福の時間を私達は得たのだ。

たとえその先に、再び別れがあるとしても、いやそれは必ずあるけど、

だけど大丈夫ぷり。信じるという感情そのものが、煌めきの所在地だとわかったのだから。

あの頃、毎週火曜日5時55分が来るのを心躍らせて待っていたように、

この素敵なアイドルタイム(idle time)を、噛みしめて生きようではないか。